1.電気と電動機の基本
 1−1 直流と交流

 1−2 3相交流

  1−3 電力の送電、配電(電力系統)と動力電源系統

    1−3−1 送電、配電(電気を送り、配る)

 発電所で電気を作りますが、発電機の電圧は11,000V(11kV)程度で、遠くに送るにはもっと電圧を高くして、電流を小さくする必要があります。これは、より細い線で、その中で発生するロス(損失)を出来るだけ小さくする必要があるからです。送電電圧は275kV、500kV等の極めて高い電圧です。

 (高圧電圧は普通kVで表します。1000V=1kV)

 この電圧を再び、使いやすい電圧に落として、電力会社が電鉄、工場、ビル、浄水場など電気を使うところに電気を配るのを配電と言います。配電電圧は以下の如くに分けられます。

        低圧      600V以下   単相 100V、200V、単相3線 100V/200V 

                           3相 220V(200V) 440V(400V)

        高圧      7kV以下    3.3kV、6.6kV

        特別高圧   7kV以上    11kV、22kV、33kV、66kV、77kV、110kV、220kV

(注) 低圧440V(400V)、高圧3.3kVは製鉄所など大規模工場内で動力用に使われることがあります。

 高圧の3相6.6kVの配電系統は主に電柱の上部の電線で、街の中に広く、広がり、柱上変圧器で単相3線100/200Vの電灯線 、3相200Vの動力線を作ります。中小規模の工場やビルにも電気を配ります。

大きな工場、ビルや電鉄は22kV、66kVの特別高圧で受電しましす。大規模な製鉄所などでは110kV、220kVで受電するところがあります。これらの高圧、特別高圧で受電するところでは、高圧、特別高圧を1回線、または2回線(本線、予備線)で受け、必要な電源系統をそれから作ります。

 

                                         

                           電鉄用変電所(富士急行田野倉変電所) TNさん撮影

                 

 これは私鉄の変電所の一例です。2回線(本線、予備線)受電で、特高部分が屋外、直流部分が建屋内に収納されております。

 この電源系統にはその工場、ビルに設置される電動機も接続されますので、電動機を廻す時、この電源系統のことを知っておく必要があります。

 (電源の信頼性を重視して本線、予備線で外部電源を受電していた福島の原発では、同じ、鉄塔を使っていたため、鉄塔の倒壊で電源喪失の大事故になりました。)

 

 1−3−2 動力電源系統(工場配電)   

  (1)構成と使用機器

   図1.17に動力電源系統の例を示します。

              

                         図1.17 動力電源系統(一例)

 これは単線結線図と言われるもので、3相を一本の線であらわしています。66kVの特別高圧を受け、必要な高圧電源、低圧電源を作っています。電力会社からの受電点にVCB(真空遮断器)を設け、DS(ディスコンー断路器)で2回線に分けています。そして、それぞれに変圧器を設け、6.6kV、3.3kVの高圧系統を作っています。6.6kV系統に更に変圧器を設け、440Vの低圧動力電源を作っております。440V系統には小容量の誘導電動機を始動し、保護するための器具を収めたモータコントロールセンタがあります。3.3kV系統には高圧誘導電動機を 始動するコンビネーション・スイッチがあります。VVVFは小容量汎用インバータの場合は低圧系統に直接接続しますが、ある程度の容量、特に、電源力率をほぼ1に保つPWMコンバータ (詳細は3章で詳しく解説します。)の場合は入力側に変圧器を設けます。 図から省略しましたが、照明などの単相100Vも高圧電源から作っていることもあります。

 

 変圧器(トランス)

 動力電源系統の主役はもちろん変圧器です。

変圧器は電圧を落とすのが、目的ですが、それ以外に重要な役割があります。回路がなにかのアクシデントで短絡した場合の電流(短絡電流)を抑えることです。変圧器には大きな内部インピーダンスがあり、これが、短絡電流を決めます。変圧器には%IZ(パーセント・インピーダンス)という内部インピーダンスを表す仕様項目があります。これは定格電流が流れた場合、2次電圧は100%降下、すなわち、0Vになる内部インピーダンスを100%として、内部インピーダンスの大きさを表示しております。

 

 電圧変動と電源容量

 その電源系統にどの程度の負荷が接続できるかは、変圧器の容量だけでは決まりません?その系統に許容された電圧変動も考えねばなりません。 低圧動力電源や電灯線の許容電圧変動は±10%ですが、その上位になる高圧系統、特高系統は±3〜5%に抑える必要があります。変圧器の 内部インピーダンスもその殆どは誘導性リアクタンスです。又、ケーブルのインピーダンスも誘導性リアクタンスですので、遅れ無効電力が流れた場合、電圧はドロップします。誘導電動機などは多くの遅れ無効電力を発生しますので、系統の電圧をドロップさせます。 変圧器の2次電圧は無負荷時の値ですが、負荷の 発生する遅れ無効電力により、電圧降下を想定して、電圧変動を許容値以下に抑えるようにせねばなりません。変圧器の1次側には±2.5%、±5% の電圧が調整出来る 無負荷タップ切り替え器 がありますので、上位系統の変動も考慮して、無負荷時の2次電圧を高めにして おくことも考えられます。系統にコンデンサを接続し、その発生する進み無効電力で、遅れ無効電力を相殺することは良く用いられます。しかし、ポンプ、送・排風機のように負荷変動が少ない場合は有効ですが、負荷変動が大きく、発生遅れ無効電力も大きく変動する場合は、気を付けねばなりません。かご形誘導電動機の始動時には電動機の約6倍程度大きな遅れ無効電力が発生しますので、これも、予め、見込んでおく必要があります。 かご形誘導電動機の始動時の電源電圧とその対策については2−5−1で述べます。

 

 電源系統の保護

 動力電源は変圧器、これを切り替えるスイッチ、これらをつなぐケーブルなどで構成されておりますが、高い電圧がかかり、大きな電流が流れておりますので、回路上、負荷の異常があった場合、機器、ケーブルが損傷しないような保護をせねばなりません。

 

短絡保護と過負荷保護

 最も重要な保護には短絡保護と過負荷保護があります。短絡保護は瞬時保護と言われ、過負荷保護は限時保護とも言われます。 短絡保護は文字通り、系統が何処かで短絡した場合の保護で、大きな事故電流が流れますので、該当の系統を即、切り離し、他の電源系統を保護します。過負荷保護は負荷が何らかの原因で、計画値より多くなった時の保護です。例えば、150%電流が一分間流れ続けた場合、該当の回路を切り離します。

 

 短絡電流ー遮断容量と遮断電流

 系統の何処かで、ショート、短絡した場合、大きな電流が流れます。この時の短絡電流は通常、遮断電流と称し、遮断器が切ることが出来る電流ということです。遮断容量 という仕様項目で遮断器の定格を表すことがあります。

 系統の遮断容量、遮断電流はそれを作る変圧器の容量、%Iz、2次電流から概略以下のごとく、求めることが出来ます。ここでは、図1.17に示す6.6kV系統の遮断容量、遮断電流を求めた例を併せて示しました。

                  

 正確には上位系統、ケーブルのインピーダンスも考慮して算定せねばなりませんが、概略の値としては充分です。

 

 主回路スイッチとその種類ー遮断器(CB)、接触器(コンタクタ)(Ctt)、断路器(ディスコン)(DS)

 動力電源系統の主回路のスイッチとしては大別して、遮断器、接触器、断路器があります。その機能を下表に示します。 

 

  略号

 定格電流のON−OFF 

 遮断電流のOFF

      付記

   遮断器

   CB

      ○

     ○

 遮断回数寿命が短い

  接触器(コンタクタ)

   Ctt

      ○

     ×

 開閉寿命が長い

  断路器(ディスコン)

   DS

      ×

     ×

 定格電流通電は可能

 

 系統短絡時の遮断電流を切り、保護するのが遮断器です。現在、特高、高圧系統用遮断器には真空バルブ遮断器(VCB)がもっぱら使われています。許容遮断回数は1万回です。特高系統ではVCBが定格電流を入り切り出来る唯一のスイッチで もあります。接触器(コンタクタ)は高圧、低圧の誘導電動機始動用のスイッチで、高圧コンタクタで開閉寿命は10万回と多いのですが、回路短絡時の遮断は出来ませんので、遮断 器、フューズと組み合わせて使います。断路器(DS)は回路を分岐する時に経済的考慮により、使われます。図1.17の例では、6.6kV、3.3kV系統を作る二つの変圧器の1次にはVCBを共通にひとつ設置し、DSで分けています。どちらかの系統を切る必要があるとき は、共通VCBで、一旦、切ってから、DSを開放します。ONにする時も先ず、VCBを切ってから、DSを投入致します。 断路器の役目は経済的な系統の実現と安全対策があります。遮断器が電磁ソレノイドなどで、ON-OFFを遠隔操作するのに対し、断路器はディスコン棒 (ディスコンを入り切りするフックの付いた棒)などで、直接、入り切りをします。作業などで、系統を開放する時、 遮断器を切ってから、断路器を切り、系統から完全に電気を切り、何らかのミスで遠隔操作で電気が投入されないようにしています。

 

 電動機始動装置ーモータ コントロール センター(MCC)、高圧コンビネーションスイッチ(CBS)

 誘導電動機始動と保護のスイッチはそれに特化した装置としてまとめられております。低圧200/220V、400/440Vの電動機用はモータ コントロール センター(MCC)と言います。各モータ始動の回路(フィーダと言います。)はMCCBとCttの組み合わせになっております。MCCBは英語のMoulded Case Circuit Breakerの略で、通称NFB、ノ―ヒューズ・ブレーカー、家庭の電気の引き込み口に見られるものと同じです。低圧遮断器で、回路短絡時の保護を行います。瞬時保護です。Cttは低圧電磁接触器(コンタクター)で電動機の投入を行います。その下にTH-Ryとあるのは熱動継電器(サーマルリレー)と言われるもので、過負荷電流がある程度流れると作動し、Cttをオフします。限時保護(過負荷保護)です。これらにより、電動機の過負荷による焼損を防ぎ、モータへのケーブルや内部のレアーショートによる電源への影響を防ぎます。これらはフィーダ毎に 引き出し状のユニットにまとめられ、コンパクトな鉄製の筐体(キュービクル)に積み重ね、収納されております。高圧用誘導電動機用には高圧コンビネーションスイッチがあります。MCCBのかわりの短絡瞬時保護の為、パワーフューズが用いられております。

 

 保護協調

 モータなどの負荷端、系統の中のケーブルの短絡などが起きた場合はその直近の遮断器が作動し、短絡した回路を切り離します。1つの低圧誘導電動機のケーブルがねずみなどにかじられて、ショートすることは、しばしばありますが、この場合、このモータのフィーダのMCCBが遮断し、他の系統には全く影響しないように、電流、動作時間などの保護リレーの設定を行い、上位の遮断器は決して、作動しないようにしています。 これを保護協調をとると言います。詳細な説明はここでは行いませんが、動力電源系統の計画、運用で極めて重要なことです。我が国では殆ど起きませんが稀な例として、化学プラントの動力電源の保護協調が充分でなかったため、末端の短絡事故で、メインの遮断器がトリップし、この化学プラントは復旧の為、数か月を必要とし、この会社の決算に重要な影響を与えたことがありました。動力電源の計画、管理が地味なものですが、極めて重要であることをこのトラブルは示して呉れました。

 

2.電動機とその使い方
  2−1 電動機(モータ)はどのように廻り、力(回転力)を出すのか?

  2−2 電動機と負荷機械

   2−3 電動機の顔ぶれ

    2−3−1 電動機の種類

    2−3−2 直流電動機
     2−3−3 同期電動機       

         2−3−4 誘導電動機

    2−4 電動機の使い方

       2−4−1 直流電動機の使い方

     抵抗始動(抵抗制御)

     可変電圧制御ーレオナード

         ワードレオナード

         静止レオナード(水銀整流器)

         サイリスタレオナード

    2−4−2 かご形誘導電動機の使い方
       3相交流動力電源に直接接続して始動、運転をする
       可変電圧可変周波数(VVVF)電源による回転数制御

(2012-3-28)作成

 

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