1.電気と電動機の基本
 1−1 直流と交流

 1−2 3相交流

 1−3 電力の送電、配電(電力系統)と動力電源系統

2.電動機とその使い方
 2−1 電動機(モータ)はどのように廻り、力(トルク)を出すのか?
     
   →電動機の基本原理と性質
 

 2−2 電動機と負荷機械

  2−3 電動機の顔ぶれ

  2−3−1 電動機の種類

  2−3−2 直流電動機

  2−3−3  同期電動機         

  2−3−4 誘導電動機

      かご形誘導電動機

      巻線形誘導電動機

  2−4 電動機の使い方

    2−4−1 直流電動機の使い方

   2−4−2 かご形誘導電動機の使い方

       3相交流動力電源に直接接続して始動、運転をする

       可変電圧可変周波数(VVVF)装置による回転数制御

 

  2−4−3 巻線形誘導電動機の使い方

 蒸気を発しながら走る電気機関車があると聞いたことがあります。確か、スイスあたりをその昔走っていたようです。日本にも、蒸気をたなびかせて走る電気機関車がありました。

    

 これはその電気機関車EF57の1号機です。昔の客車はスチーム暖房でしたので、電気機関車は暖房用蒸気を発生しるためのボイラーを積んでおり、その蒸気が漏れていたのです。しかし、スイスの電気機関車は電動機を始動、加速するとき、蒸気が発生したようです。直流電動機ではなく、巻線形誘導電動機を使い、その2次抵抗制御という方式で機関車を始動、加速しておりました。2次抵抗器に水抵抗器を使っており、その始動、加速時に水を加熱し蒸気が発生したものです。

 今では、VVVFインバータでかご形誘導電動機の速度をスムーズに制御できるようになりましたが、3相交流電源に接続し、始動、運転する場合、始動時に大きな無効電力が生じ、 このため、電源の電圧降下を生じ、電動機自体もダメージを受けます。このため、電気機関車、電車のように頻繁に始動する用途には使えませんでした。ほとんどの電気機関車、電車は直流電動機を使うようになりましたが、安価で、より堅牢な巻線形誘導電動機を使うことも試みたことがあったようです。

 一般的に、余りお馴染みとは言えませんが、巻線形誘導電動機(WRIM)はVVVFインバータを使用しなくても、始動時に大きな電源電圧降下が生ぜず、電動機自体もダメージを 受けませんので、頻繁に始動を繰り返す用途や、駆動する機械の慣性モーメントが過大で、かご形誘導電動機では熱容量の限界で、対応出来ないものに使用されて来ました。前者の例ではクレーン、後者の例には大型送風機(ブロワ)が挙げられます。 始動には2次抵抗制御が用いられます。

 また、巻線形誘導電動機を使って回転数制御を行う方式として、2次電圧制御が使われて来ました。2次巻線に接続したインバータで、2次電圧を変え、電動機回転数を制御しようというものです。2次 巻線に誘起する電圧はすべり周波数sfに比例し、同期回転数(100%速度)で0、静止時(0%速度)で最大になりますので、高速範囲のみで回転数を制御したい用途には経済的な方式です。ポンプ駆動の場合、回転数の2乗に比例し楊程が小さくなりますので、回転数はあまり低く出来ません。浄水場のポンプでは回転数制御は約70%速度以上で回転数制御を行いますので、伝統的にはこの方式が採用されております。

 巻線形誘導電動機は2次回転子に3相巻線があり、その中性点を外部に引き出し、2次抵抗器やインバータを接続致します。外部の抵抗器やインバータとつなぐため、スリップリングとブラッシがあります が、2次電流は負荷電流で、大きな電流が流れますので、多数のブラッシが存在致します。直流電動機の整流子程複雑はありませんが、保守の手数はかかります。依って、現在ではVVVFインバータで駆動したかご形誘導電動機が採用される場合が多く、適用ケースが少なくなりつつあります。しかし、加速後に一定速度で回転させる用途では、加速終了後、中性点を短絡し、ブラッシを引き上げる「ブラッシ引き上げ装置」がありますので、安価で保守の手も省ける ますので、今後も適用されるケースはあると思います。

 また、2次電圧を制御する巻線形誘導機を風力発電の発電機として適用するケースが見られます。経済的で電源系統との接続も容易で、2MWぐらいの中容量の風力発電機にはもっぱら使われているようです。

これも、洋上風力発電機などでは、耐環境性とメンテの手数を省くため、PMSM(永久磁石同期発電機)の適用が検討されているようです。

 

    2次抵抗制御

 巻線形誘導電動機の原理はかご形誘導電動機と同じです。

      

                図2.22 巻線形誘導電動機の原理図

 図2.22に巻線形誘導電動機の動作を表す簡単な回路を示します。電動機の中がこのようになっていると仮定した回路で、等価回路と称し、単相 で表します。これは少し省略したものですが、これをベースに動作原理を考えましょう。いずれの電動機も磁束の中を横切っている導体に駆動する負荷に必要な負荷電流が流れた時、この導体に力が発生し(フレミングの法則)、回転体の周辺にこの導体を配置すると、この回転体にトルク(回転力)が発生し、回転します。誘導電動機は負荷電流と共に磁束を発生させる電流も一緒に固定子(1次)コイルから供給されます。主磁束Φは励磁リアクタンスX0に励磁分電流i0が流れ込み発生します。運転したい回転数に比例した1次周波数に負荷トルクに比例したすべり周波数fsを加えた周波数をVVVFから与えます。 1次巻線が発生する主磁束Φと異なる磁束Φが2次巻線を横切り、2次 巻線に電圧を誘起します。固定子(1次)と回転子(2次)の速度の差が大きくなれば2次巻線を横切るΦが多くなりますので、は大きくなります。 2次巻線にかかる周波数は1次の電源周波数と1次周波数の回転数と回転子の回転数の差を表すすべりとの積、fsになります。すべりが小さなとき、例えばs=0.05で、が50Hzの場合、fs=0.05X50 =2.5Hzと非常に低い周波数が2次巻線にかかります。このため、2次巻線の内部リアクタンスX2は極めて小さくなり、内部抵抗の比率が大きくなりますので、2次電流iのほとんどが、有効電力(=負荷電流)になります。しかし、すべりは大きいとき、例えば、s=0.5の場合、0.5X50 =25Hzになり、X2が大きくなり、このため、発生する遅れの無効電力がたくさん発生します。

 これは、2次巻線内部リアクタンスX2は下式の如く、fsに比例し大きくなるからです。(は2次巻線のインダクタンス で巻線固有の値で周波数には影響されません。)   

                                                                                                                                                                                                                                                   

        

          図2.23 巻線形誘導電動機のすべりートルク、電流特性

 図2.22に巻線形誘導電動機のすべりー電動機発生トルク、1次電流の特性を示します。Tは外部に2次外部抵抗を接続せず、中性点を短絡したときの特性で、かご形誘導電動機と同じです。すなわち、すべりが増えるに従い、無効電流が増加し、始動時は600%と過大になります。2次外部抵抗を増やすに従い、カーブで右下がりの部分、 すなわち、有効電力が占める割合の大きなすべりの範囲が大きくなり、ついに大きな無効電力がすべりの全域で発生しなくなります。依って、外部抵抗の量を調整すれば、電源に遅れ無効電力を発生させることなく、2次回転子に過大な電流を流すことなく、電動機を始動加速出来ます。

加速するに従い、抵抗を抜いてゆき、加速終了後、中性点を短絡し、連続運転に入ります。ブラッシを引き上げ、ブラッシの無用な摩耗を防ぐ装置が付いている電動機が殆どです。

 しかし、抵抗には2次電圧の大半がかかり、加速時の負荷電流が流れますので、大きな損失を生じます。このため、適用する抵抗器には大きな熱損失が生じます。比較的、小容量の電動機には鋳物のグリッド抵抗器、中大容量電動機には水抵抗器が用いられます。 これはタンクの中の水に岩塩などを入れて、3相の電極をその中に降ろして、極管のギャップを調整して、抵抗値を調整しようというものです。水は加熱され、蒸気が発生することがありますので、上記の電気機関車は水抵抗器を積んでいたものと思われます。

                  

              図2.24 巻線形誘導電動機の主回路

 3相巻線形誘導電動機の主回路を示します。2重丸の外側は固定子、1次巻線、内側は回転子、2次巻線を示します。

    2次電圧制御
 
2次抵抗制御でも、回転数を変えることは出来ますが、抵抗を入れたままですと、発生損失が過大になりますので、始動時のみ、抵抗を入れる用途に専ら使われています。これに対し、2次に誘起する電圧を変えて、回転数を制御する2次電圧制御方式は、大きな損失を発生しないで、回転数を変えることが出来ます。

               

        図2.25 巻線形誘導電動機のすべり、回転数と2次誘起電圧、2次電流の関係

 誘導電動機の2次巻線に誘起する電圧はすべりで巻線を横切る磁束の数が決まりますので、すべり1で最大の電圧になり、すべり0で0になります。これは、が0%回転数で最大電圧になり、100%回転数で0になることを意味します。2次電流は負荷電流で負荷が要求するトルクに比例します。   

     

         図2.26 巻線形誘導電動機の2次電圧制御(サイリスタ セルビュウス)

図2.26図に巻線形誘導電動機の2次電圧制御方式の代表的なサイリスタ セルビュウスの主回路を示します。2次電圧をINV(サイリスタ インバータ)で制御するものです。回転数制御範囲まで、2次抵抗を変え、始動、加速したのち、Rf(整流器)+INV(サイリスタインバータ)を投入します。電動機の2次電圧をRfで直流に変換致します。

INVで、その直流電圧を制御し、2次に発生した電力を電源に回生します。回転数を70%以上のみで変えたい場合、2次電圧は(100−70)=30%の制御範囲で済みます。インバータ容量は√3xですので、1次電圧を制御する場合に比べ、インバータ容量は30%以下で済み、極めて経済的と言えます。

例えば、3000kW−3.3kVー50Hz−615Aー3相、2次電圧3.3kV、2次電流553Aのポンプ駆動の巻線形誘導電動機を2次電圧制御で、70%以上の回転数制御をする場合のインバータ容量は

                √3x3.3x0.3x553=947kVA

のインバータで済みます。もし、1次にインバータを入れますと

                √3x3.3x615=3511kVA

の容量が必要になりますので、2次電圧制御の場合、27%の容量にインバータで済みますので、極めて経済的です。このため、浄水場のポンプには伝統的にこの方式が採用されて来ました。

 また、負荷電流を直接制御出来るので、制御性能にも優れており、圧延機などにも適用が検討されたことがありますが、電動機のブラッシの数が多く、メンテの問題があり、実際に適用されたものは無いと思います。

 現在この方式が多用されているのは、風力発電の発電機としてです。1次は電源に接続し、2次電圧は風車の回転数変化に速やかに追従し、発電出来る最も経済的な方式として2MWクラスをなどに多く使われているようです。(インバータにはサイリスタインバータではなく、自励式PWMインバータが使われているのもあるかも知れません。)しかし、これも、洋上風力発電などの場合、耐環境性とメンテの問題で、永久磁石同期電動機(PMSM)の適用が考えられているよです。

 経済的な見地から、今後共、ある程度使われ続けるかも知れませんし、浄水場などで稼働しているものも多いと思いますので、このような電動機とそれを使った方式があることを知って頂ければと思います。

                   
2−4−4 同期電動機の使い方
 3相交流電源に直接接続して始動、運転をする
 可変電圧可変周波数(VVVF)電源による回転数制御


(2013-3-18)作成 

 

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